かつて確かに生き、愛し、夢を見た人々の無数のStoriesの中から、
今回は二つの短編「ハマコ」と「周ピアノ」を上演します。
「ハマコ」は、1920年代横浜の娼館〈ウキヨホテル〉を舞台に、時代を駆け抜けた大娼婦・ハマコを、専属メイドのヤエの視点から描く物語です。
ハマコを演じるのは、バーレスクダンサーであり衣裳家でもある Coppelia Circus。
その唯一無二の存在感と人と芸術への深い愛情が、時代を超えてハマコという女性の生命力を呼び覚まします。
“こんな素敵な女がいたなんて!”――観客がそう感じる瞬間を目指して。
「周ピアノ」は、横浜中華街で作られていた幻のピアノ「周ピアノ」を、空襲の戦火のなかで守り抜こうとする少女・国子の物語。
演じるのは、長年ミュージカル創作に携わる 藤倉梓。
その一途でピュアな感性が、焼け跡の中でもなお音を信じ、未来へつなぐ力を体現します。
音楽は、作曲家・編曲家・音楽監督・ピアニストとして多方面で活躍する 田中和音。
本作では、自身が手がけてきた音楽経験のすべてを凝縮し、オーセンティックなジャズの響きに物語の呼吸を重ねました。
舞台上では演奏者であり、同時に物語の登場人物としても存在し、音楽と言葉のあいだを自在に行き来します。
サックス奏者 大内満春 は、田中和音の長年の音楽的パートナー。
“言葉のない語り手”として、哀愁、力強さ、そして時空を超える輝きを音で描き出します。
ベースは、低音で物語を支える 桐沢輝。
コントラバスの深い息づかいと、エレクトリックベースのきらめきを往還しながら、
ロックの衝動も、ジャズの自由も、ミュージカルの情熱も、その指先からひとつの物語として紡ぎ出します。
音は境界を越え、旋律は語りかけます——その響きは、舞台にもうひとつの声を与えます。
5人のアーティストが紡ぐのは、かつて生きた人々の希望の記憶。
最小限の編成で、人間のエネルギーと音楽の力を最大限に解き放つ――
夜のキャバレーのように親密で、華やかで、少し切ないミュージカル『Stories』。
これからも、横浜に埋もれた“物語”をひとつずつ掘り起こし、舞台の光へと届けていきます。
